「第八話:梅ばあちゃんの葬儀」
カーン、カーン。「どうぞくじしゅうとう」葬儀が始まった。
緊張から手を震わせながらもなんとか鐘を鳴らすことができた。
親父についていくので精いっぱいだった。
後ろからは遺族や友人達の泣き声が聞こえてくる。梅ばあちゃんは幸せだったのかな?
お経をあげながらそんなことを考えていた。弔電や町内のおばあちゃんの別れの手紙、
親族挨拶もおわり正信偈のお勤めが始った。
「きみょうむりょうじゅにょらい。なもふかしぎこう」
正信偈を読みながらふと梅ばあちゃんの遺影に目をやった。
今より少し若い頃の写真みたいだ。ニコッと笑っている。
梅ばあちゃんとの思い出が走馬灯のように思い出された。
はじめてのお盆参りの時、お経に自信がなくて
だんだん声が小さくなっていく。
不安でやめてしまいたいと思った時、梅ばあちゃんは
僕より大きな声でお経をあげてくれた。
そのお経が上手いかどうかは別としてその大きな声に包まれて
自分も少しだけ大きな声がだせた。後ろから聞こえてくる大きな声は勇気をくれた。
さすがに今は前よりは大きな声でお勤めできるけど、できるけど…
後ろから梅ばあちゃんの声が聞こえることは二度とない。
そう思うと寂しさがこみあげてきた。目に涙が溜まって経本の字がかすんで見える。
泣いてはいけない。お経をとなえることが仕事だったなら泣くことは
仕事を放棄していることになる。
梅ばあちゃん以外のことを考えて、グッと涙をこらえた。
参列者の焼香も終わり、なんとか初の葬儀、無事終了した。
つづく
【永照寺だより2007年12月号に掲載されたものです】
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