〜歓は身をよろこばしむ、喜は心をよろこばしむとなり〜
お盆参りのおもいで
お盆参りに行くと忘れられないエピソードがいくつかあるものだ。
部屋に通されるなり「あ、すいません。クーラー入れるの忘れてました。ピッ」どれほどの時間がたったのだろう?頭から汗が噴きだした。白衣までグシャグシャ。「人間の体ってどうしてこんなに汗がでるんだろう?」その疑問が解決するのにさほど時間はかからなかった。「あ、暖房になってる。すいません」「ははは。暖房っすか。逆にね」逆にねって。
自分の発想を超えた食文化にも出遇える。
カルピスを牛乳で割ったものを「これおいしいんですよ」と差し出された。コップ一杯に注がれている白い液体。目を細くしながら一気に流し込んだ。もしかしたら今年流行している「ロイヤルカルピス」のはしりだったのかもしれない。他にも「一味茶」普通のお茶に一味が入っているのだ。当然辛い。その家では喉にくる適度な刺激を求めて一味茶を飲み続けておられるのだろう。小学校の頃いただいた巨大フルーツポンチも忘れる事ができない。大きなどんぶりに山盛りのフルーツポンチ。ギャル曽根でも十分はかかるだろう。全然減らないので、泣きそうになった。昼休みなのに、給食を食べきれずに一人教室に残されているようなフワッとした感覚に襲われる。いろいろなことを思い出しながら今年もお盆を迎える。多忙の為、時間をちゃんと約束しないのに待っていてくれる御門徒様。その姿がものすごく有難い。
お盆の現状
日本のお盆は、盂蘭盆(ウランバナ)と先祖崇拝が入り混じっている。地域によって様々な俗信が存在するのが特徴だ。あるおばあちゃんは「お盆の間は掃除をしちゃならん」と頑なに掃除することを拒み続けたそうだ。理由は「先祖の霊を掃除機が吸い込んでしまう」から。なんとなくダイソンには吸い込まれたくないものだ。他にも十三日に先祖の霊をお墓に迎えにいって、十五日に送りに行くという地区もある。お墓が駅みたいな役割をしているらしい。迎えにいかない家の先祖は待ちぼうけをくらうのだ。いつも気になるのだが、先祖と言っても十代前で千人を超える。全員、家の中に入ることができるのか?若手は駐車場待機ということになりそうで心配してしまう。「おじいちゃんが帰ってきているから私達はお出かけしましょ」と先祖に留守番をさせて遠出する人も増えている模様。盆踊りにしても「マツケンサンバ」を踊ったり、先祖を楽しませる余興みたいな印象をうける。
歓喜会ということ
浄土真宗ではお盆のことを「歓喜会」(かんぎえ)と言う。歓喜とは字の通り「よろこび」を意味する。我々はどんな時に「よろこび」を感じるだろう。百万円を貰った時、好きな女性と結婚できた時、子供が志望校に
合格した時、空腹を満たせた時、欲望や願望が叶えば嬉しいに決まっている。これは人間の本能だ。ただ、それとは違う種類の「よろこび」もある。
しらざるときのいのちも阿弥陀の御いのちなりけれども、
いとけなきときはしらず、すこしこざかしく自力になりて、
わがいのちとおもひたらんをり、善知識、もとの阿弥陀のいのちへ帰せよと教ふるをききて、
帰命無量寿覚しつれば、わがいのちすなわち無量寿なりと信ずるなり
『安心決定抄』
自分に貰った小遣いは自分の好きなように使える。「自分のいのち」が自分の所有物なら、人生は自分の想い通りになるはずである。しかし、心臓は「休め」というこちらの命令を無視して動き、肺は「空気を吸うな」という命令を聞かずに呼吸を続ける。「思うな」と言っても自然といろいろな想いが頭を駆け巡り、死にたくないと思っても機が熟せば死ぬ。大昔より繋がってきたであろう「いのち」の始点もわからず、どこへ向かうのか自分の力では知ることができない。「自分のいのち」「俺のいのち」は「俺の海」「俺の空」と一緒みたいに、俺のものでもないものを勝手に俺のものと言っているに過ぎないのではなかろうか。
「いのち」とは自分の範疇を遥かに超えた壮大なものなのではないかと思う。そうなれば私が「いのち」を生きている。というより私が「いのち」に生かされている。という方がしっくりくる。「いのち」が私となり現れている。大きな「いのち」に摂めとられている。私は「いのち」がはたらいている証。正直、どう表現していいか難しい。なんとなくそれぞれで感じて頂ければ有難い。
煩悩が邪魔してなかなかそう感じることは出来ないが、『本物の「いのち」に気づけよ!』と如来は常に呼びかけてくださっている。その壮大な「いのち」の世界を知ることが本当の歓喜(よろこび)ではないかと思う。お盆という時節、先祖を大切にするとともに、自らの「よろこび」を確認することも忘れてはならないのではないだろうか。
(平成22年 7月の法話 担当:永照寺住職 村上 慈顕)
●真宗門徒のお盆についてはこちら
※お悩みがあるときは匿名でいいのでメールをください。できる限りお応えできるよう努力します。
メール info@eishouji.or.jp
|