浄土真宗本願寺派 小倉御坊 永照寺
永照寺
メニュー

今月の法話

今月の法話:2013年6月

水無月

御縁の人

60歳を超えるとハリネズミのジレンマじゃないが、心地良い距離感がつかめずに仲の悪い夫婦が多い。そのご夫婦が仲良いか悪いかは置いといて心温まる話をひとつ。

その日は雨が降っていたが、久しぶりに2人で美術館に出かけた。比較的大きな美術館なので数百本の傘たちが傘立てハイツに居住している。鍵がついているタイプの傘立てなので自分で鍵を抜きとる必要がある。奥さんは順調に鍵を抜きとることができたのだが、ご主人は勢い余って、傘の群れに鍵を落としてしまった。狼狽したご主人は急いで係員を呼んだ。
係員も「沢山傘がありますので、探すのは閉館間際でないと難しいですね」と困惑していたそうだ。

その時、携帯を車中に忘れたことに気付いた奥さんが自分の鍵を挿して、傘をひらいた。すると…チャリ―ン!傘の鍵が地面にバウンドした。御主人の鍵だった。隣に置いたわけでもないのに、奥さんの傘の中に御主人の鍵がもぐりこんでいたのだ。何百とある傘の中で、奥さんの傘に鍵が入る確率はものすごく低い。2人は自ずと黙りこみ、係員は唖然としていたそうだ。なくした鍵が教えてくれた「運命の人」 この言葉は山崎さんのパクリだから言い替える。
「御縁の人」人智を超えた出遇いの不思議が二人の胸をしめつけたに違いない。

「あう」には「会う」「合う」「逢う」「遇う」と色々な漢字、意味がある。ご縁によって予期せずたまたま出逢う時、「遇う」という字を使う。親鸞聖人も、「本願力に遇う」「善知識に遇う」など、それまでの自分が百八十度変わるような「であい」に、「遇う」という字を使われている。こういう視点で出会いを考えてみると、両親、妻、子供、友人も多くの条件が重なり出会えたのだろう。なんだか感慨深いものがある。この後二人は手をつないで美術館を巡った。
帰りはきっと遇遇傘で帰るのだろう。ヒューヒュー。

(平成25年6月の法話 担当:村上 慈顕)


アクセスAccess

〒803-0814
福岡県北九州市小倉北区大手町16-16

tel:093-582-7676

tel:093-582-7676