裏を見せ 表を見せて 散るもみじ
秋も深まり、落葉の季節となりました。
今月のことばは、良寛さん(1758〜1831)です。
高齢となり、死期の迫ってきた良寛さんを訪れた、弟子の「貞信尼」が「生き死にの境離れて住む身にもさらぬ別れのあるぞ悲しき」(生死の境涯を超えて仏につかえる身にも、避けられない別れのあることは悲しいことです)。
これに良寛さんは、貞信尼の耳元で「裏を見せ表を見せて散るもみじ」とつぶやかれて亡くなったそうです。
その前に、良寛さんは
「形見とて何残すらむ 春は花夏ほととぎす秋はもみじ葉」
「良寛に辞世あるかと人問わば南無阿弥陀仏というと答えよ」
という歌も残されています。
親鸞聖人は、『教行信証』の『行巻』で南無阿弥陀仏を「大地のごとし」と述べられています。
大きな樹木も、小さな草花も等しく大地に支えられています。「ふきまろぶ落ち葉にしかと大地あり」落ち葉も、また然りです。
禅宗の僧侶であった良寛さん、晩年は「南無阿弥陀仏」の教えをよろこんでいました。
裏も表も、出会いも別れも、よろこびも悲しみも、我が身に受けていく人生です。そして、その私をしっかり受け止め、支えてくださるのが、大地のごとしと喩えられた「南無阿弥陀仏」の教えです。
(令和2年11月の掲示板)