鬼蔵の体はいたるところに豆粒大の赤い痕が出来ていた。
息子の鬼吉に豆が当たらないよう全ての豆を自分の体に受けたからだ。お年寄りから小さい子供まで、
「鬼は外」と笑顔で叫びながら全力で豆を投げつけてくる。
「お父さん、やり返してよ。やられっぱなしは悔しいよ」鬼吉の目にはうっすら涙が浮かんでいた。
「豆をぶつけられる私より、豆をぶつけなくてはならない人間の方が可哀そうだ。鬼が怖くて仕方ないんだ。やつらの気がすむまで受けてやるよ」
鬼は悪さをしそうだから、見た目が怖いから、災いをもたらしそうだから、みんなやっているから。
理由はいろいろあるだろうが、彼らは毎年豆を投げてくる。
豆を受ける鬼蔵の姿はやられているのに勇ましかった。
鬼吉は落ちた豆をかじりながら「父ちゃんのような鬼になりたい」と密かに思っていた。
文章:むらかみ けん
住職も編集委員になっている『仏教こども新聞』2月号から…
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